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論文紹介(概要)

文献タイトル
感謝の構造―生起状況と感情体験の多様性を考慮して―

掲載先
感情心理学研究, 第18巻 第2号, pp.111-119.

概要
 感謝の生起状況(感謝はどのような状況におかれたときに生じるのか)と、感謝の感情体験(感謝はどのような内容の感情として経験されるのか)について検討した。

【予備調査】
 大学生・大学院生を対象とした面接調査を実施した。また、これまでの感謝研究で取り上げられた場面の収集も行った。面接調査と先行研究から収集された場面の内容を分類した結果、感謝生起状況は、「被援助状況」、「贈物受領状況」、「他者負担状況」、「状態好転状況」、「平穏状況」の5種類に整理された。
被援助状況:個人が困っているときに他者から助けられる状況
(例:課題がこなせず泣いてしまったときに、友人が話を聞いてくれた)
贈物受領状況:個人が特に困っていないときに他者から何らかの資源の提供を受ける状況
(例:誕生日にアルバイト先でプレゼントをもらった)
状態好転状況:個人を取り巻く何らかの状態が好転する状況
(例:ずっと欲しくて探していた本が見つかった)
平穏状況:一見個人を取り巻く状態に大きな変化のない状況
(例:日雇い労働者の生活についての本を読んだ)
他者負担状況:他者から直接支援を受けるのではなく、他者に負荷がかかったことによって個人が間接的に支援を受ける状況
(例:研究室のゴミ捨てをほかの人がした)
 また、同調査では、感謝の気持ちを言い表す言葉についても尋ねた。また、感謝についての先行研究から、感謝生起状況における感情体験を測定する際に用いられた語も収集した。その結果、嬉しさ、申し訳なさなど多数の言葉が収集された。

【本調査】
 大学生対象とする質問紙調査を行った。調査では、5種類の感謝生起状況における感情体験を測定した。
 分析の結果、感謝の感情体験には「満足感」因子「申し訳なさ」因子の2種類があり、状況の種類によって感じられやすさが異なることが示された。